クニエ漫画グランプリ2021
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テーマ:貢献 『偽善者物語』

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連載作品寸評コメント

たられば

たられば(@tarareba722
編集者

たられば(@tarareba722とても完成度の高いシリーズでした。第1話からシリーズを通して読むと、この最終話後半に入ったところでヨーコが「パチンパチン」と何かを受けているのは「炊き出しのおにぎりを握るためにベテランボランティアさんから爪を切られているんだな」ということがわかります。女子高生にとっては(そういうことが得意な友達がデコってくれたであろう)ネイルを切る、という行為が、ある種の「決意」を示す儀式的効果を生んでいる描写だなと思いました。
主人公の周りに友達を配して、だんだんと「貢献の意思」が伝播する様子を描いたのもよかったです。登場人物たちの今後の明るい未来を祈りたくなる作品でした。お見事。

シャープさん

シャープさん(@SHARP_JP

シャープさん(@SHARP_JP「打算的な目論見があってする善行は偽善か」をじっくり考える作品だった。日常的に行う私たちのほとんどの行為は、行為の結果でもってその良し悪しを他人から判断されるものだが、なぜか私たちは行為そのものを行うことに後ろめたさを感じる場合がある。電車で席をゆずる時でさえ、私は小癪な人間に見えるのではないかと、私が私の行動を監視してくるのだ。世界がせまく不安定ゆえに周囲の目が気になる思春期なら、その監視はおどろくほど厳しい。
彼女の行為は偽善ではないかと目を向ける友人もまた周囲の目を恐れて、自身が行う行為にそれぞれがどこか後ろめたさを抱えている。その後ろめたさ同士がふと重なる時、お互いの後ろめたさを友情が軽やかに上回るエピソードが毎回描かれた。
周囲とか社会の目といった漠然たる不安は、目の前にいる友人を助けたいという、小さな思いやりでもってこそ昇華できるのではないか。その一見弱々しい結びこそが、つい大きな視点で語られがちなボランティアという行為を照らしているように感じた。

クニエ

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