クニエ漫画グランプリ2021
クニエ漫画グランプリ2021
#1 六作品から見えた「傾向」

—「この作品のこのエピソード、第何話がすごく印象に残った」という観点で、お二人の感想はどうでしょう? 
SHARP
シャープさん
僕はどの作品の何話というよりは、偶然だと思うんですけど、こういう変わった漫画賞──六つのテーマに分かれて作家が六作品を出す──において、テーマが違うのに、なぜか仕事の話、もっと言えば「物を売る」ってことに対する表現が複数あって、ものすごく面白いなと思ってましたね。

—むしろ、全体的な傾向が印象的だった……と。
SHARP
シャープさん
おそらく何らかの形で読者を想定してそういう選択をしたのか、あるいは同じ問題意識を持っている作家さんが多かったのか、原因はわからないですけど、期せずして同じことを語ろうとしてる人が複数いたっていうのは、すごく面白いなと思っています。
たられば
たらればさん
その文脈でいうと、作品を発表する人が亡くなって、その思いをどうするかという作品もふたつあって、そこで「これ、偶然なのかな?」って思いました。
SHARP
シャープさん
それもそうだ、そうですね。
たられば
たらればさん
ほぼ同じテーマを扱ったものが二作品ずつ二パターンあったのは偶然なのかどうなのか、ちょっと編集さんに聞いてみたいくらいですね。たとえば少年誌だと、たまにあるじゃないですか?

—サッカー漫画が複数の週刊誌で連載されてる的なことでしょうか?
たられば
たらればさん
もうちょっと広くて、「部活漫画が同じ雑誌に載っている」とかですかね。でも、似ている作品が二つあったのは、むしろ面白かったなと思います。個人的には『偽善者物語』っていうボランティアをテーマにした作品の寸評は一番苦労せず書けました。たぶん、作者の方と私の感動させたい、心がこれで動かしたいなっていうポイントが似ていたからだと思います。

—シャープさんが一番寸評を書きやすかったのはどの作品でした?
SHARP
シャープさん
僕はさっきも話しましたが、一話ごとに完結する話のほうが、やっぱり機能しやすいなと思っていて──それはこの漫画賞の主旨とは沿わないのかもしれないけど──だから、やっぱり毎回のエピソードが完結するもののほうが、寸評は書きやすかったです。いかに読まれるかとか、いかに広がるかってことを考えたときに、一つのテーマのもとに毎話毎話のエピソードとして完結するっていう体裁が、いかに機能しやすいか痛感しましたね。

—具体的な作品名が出てないので、具体的な作品名で一つくらい挙げていただけると (笑)
SHARP
シャープさん
そこに触れないほうがいいのかなって思ってたんですけど、ええっと、カーディーラーのお話……。

—『田端、明日は売るつもり!』ですね。
SHARP
シャープさん
それです。しつこいですが、毎話完結しているというのがひとつ。あと、「物を売ることの本質」というある種ビジネス書的なことを語っているんですが、やっぱり漫画形式であることによって読む人により響きやすくなっていると思います。
たられば
たらればさん
さっきも話題になりましたが、「物を売る」というところは、不動産屋さんの『お人好し戦略』とかぶっていますよね。
SHARP
シャープさん
どちらかというと『お人好し戦略』のほうが続く要素があって、『田端、明日は売るつもり!』は各話が独立してますよね。

—僕は不動産屋さんのお父さんのキャラが結構好きだったんですけど。
SHARP
シャープさん
そうですね。最後泣いたのはよかったと思うけど(笑)
たられば
たらればさん
あのお父さん、いわゆる師匠キャラかなと思っていたら、途中から教わり始めたじゃないですか、息子から。要するにキャラクターチェンジしていますよね。役割というか、作品の中で。

—あれは最初からそういうつもりだったんですかね?
たられば
たらればさん
それがちょっとね、聞いてみたかった。途中で聞けないんですけど(笑) あんまりないパターンですよね。実の親だからできるけど、サラリーマンだったらちょっと難しいですよね。

—会社がなんだか変なことになりそうです(笑)
たられば
たらればさん
それから、今回は「誠意」「共感」といったテーマがありますよね。これは寸評にも書いたんですが、それぞれのテーマが、作者にとって外枠を決めるための踏み台として有利に働いたのか、それとも足かせになったのかは気になります。テーマから離れようとしているように見える人もいれば、武器のように使っている人もいたように思えます。

—職業作家でも、そのあたりは分かれるといわれますよね。完全にフリー、野放し状態が最高だという作家さんと、縛りがある方が逆算して組み立てられるから楽だっていう作家さんがいるように思います。広告漫画だと、やっぱり後者のタイプの方が向いていると思うのですが、シャープさんの食指は動きましたか?
 
SHARP
シャープさん
やっぱり『田端、明日は売るつもり!』のmicomaluさんですね。……うまいなって(笑) 
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#2 クニエ漫画グランプリの意義

—このクニエ漫画グランプリは、企業がお金を出して漫画賞を主催するという取り組みです。これは、通常の漫画の新人賞とは違いますよね。「今回賞を取ったら雑誌に掲載されます」とか、「担当編集者がつきます、連載獲得を目指しましょう」とか、そういうものとはちょっと違う。こういう異業種の会社が主催する漫画賞というのは、どういう感じで受け止められました?
 
たられば
たらればさん
すごくよいと、ありがたい話だと思います。たぶん荒れ地に苗を植えるような、あるいは、芽吹くかどうかわからない種をまくような気持ちでやられたんだろうなと思うんですけど、そういうことをやらないとたぶん、荒れ地は荒れ地のままなんですよ。
SHARP
シャープさん
最初はゼロから始めるしかないですからね……。
たられば
たらればさん
その高い志に、微力ながらお手伝いできて光栄です。別にお金をもらってるから言うわけではないですよ(笑) あとは、これが続くといいなとも思いますし、めぐりめぐってクニエさんのためにもなってほしいなと思います。関わる人がみんなハッピーにならないと続かないので。

—クニエさんにとっては、漫画賞を主催しても具体的にすぐ会社に何らかのメリットがあるわけじゃないですからね。
  
SHARP
シャープさん
普通の会社だったら、こんなぶっ飛んだ企画は通らないですよね。すごいことです。

—「こんな予算、ハンコ押せないよ」って光景が目に浮かびます……。
 
 
たられば
たらればさん
すごく大きな話になっちゃいますが、かつては製造業とかでも研究職ってありましたよね。でも、わかりやすくしなきゃいけないっていうので廃止しちゃって、株主への利益還元とかを優先して、それが巡り巡って日本経済の低調にも影響していると思うんです。
SHARP
シャープさん
雰囲気的に、どこの会社も短期的な成果が求められている感じはありますね。
 
たられば
たらればさん
本当は何のためになるのかわからないけど、社会的にレンガを一個積むようなことが、企業にとってすごく大事なことであるっていうのは、なんとなくみんなの共通認識だったはずなのが、そうではなくなってしまった。言ってしまえばそれをもう一回やろうっていう取り組みですから、本当に続いて欲しいなと思います。
SHARP
シャープさん
たらればさんのご意見を承けて言うと、企業が文化施設やイベントに協賛するっていうのがありますよね、美術館の作品展に協賛するとか。僕も「協賛しませんか」っていうオファーを受けたりすることがあるんですが、それと同じように漫画賞に協賛あるいは企画する企業が出版社でないっていうことがもっと普通になってもいいんじゃないかな、と思いました。僕は美術館に行ったら協賛企業を見るようにしていますが、別に業種が決まっていたりしないわけで……。
 
たられば
たらればさん
それはもう職業病ですよ(笑)
SHARP
シャープさん
そう(笑) でも、ダイキンさんとかしっかりそういう社会的な取り組みをされていますし、同じように漫画賞を企業が主催するっていうことが、今までの企業目線の延長として、ありえるんじゃないかなと今回をきっかけに思いました。
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#3 来年の応募者へのメッセージ

—では、来年の応募者に向けたメッセージをお願いします!
たられば
たらればさん
応募作からネーム作成、1話、2話、3話と、みるみる伸びてゆく作者もいれば、「お、こういう味を出してきたんですか……」と意外なトランスフォーメーションを見せる作者もいて、つくづく連載という形式は作品と作者を成長させるものだなと実感しました。Webで6話限定、6作品で競い合うかたちと、かなり特殊な形式ではありますが、成長の糧になるのは間違いなく、ぜひ多くの方にチャレンジしてほしいなと思います。
SHARP
シャープさん
次回のクニエ漫画グランプリがどんな形式の漫画賞になるか私にはわかりませんが、単に1作を応募して結果を待つというような単純なあり方ではないと思います。マンガを志す方は、続けるとか発信するという意思を磨いて、ぜひ挑戦してみてください。
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#4 漫画との接点
—お二人の、普段のお仕事における漫画との接点についてお伺いしたいのですが。
たられば
たらればさん
私は本業では、漫画に関わることはないですね。
SHARP
シャープさん
僕もあんまりないかな……。
  
―あれ? シャープさんはコミチさんで寸評の連載を持たれてますから、ないというわけではないのでは?
SHARP
シャープさん
そうなんですけど、どこまで本業なんだろう(笑) 僕は社内での仕事が広告関連なので、広告表現のあり方とか、媒体なんかを考えるうちに、「広告の企画として漫画をもっとやりたいな」と思うようになって、それでコミチさんを知り……。
たられば
たらればさん
思い出した! 空気清浄機だ! 
SHARP
シャープさん
ああ、そうでした。

─すみません、あの、読者の方がわかるように(笑)
たられば
たらればさん
えっとですね、シャープさんとこの対談が掲載されている媒体であるコミチさんが関わるきっかけになったのって、コミチさんに投稿された漫画がきっかけなんですよ。
夫婦のストーリー漫画で、空気清浄機をプレゼントするシーンがあったんですが、その空気清浄機に、小さくプラズマクラスターのマークが描いてあったんですよ。
それだけで、この空間をちょっとよきものにしようという登場キャラクターたちの意志が感じられて、「プロモーションとしてこれはすばらしいなぁ」と。「これはたぶんSHARPの人もすごい喜ぶだろうな」って思ったら、シャープさんが反応していて。それでコミチさんに「シャープさんに連絡取ったほうがいいですよ」って言ったんです。
SHARP
シャープさん
いや、完璧な説明をありがとうございます(笑) そこから、家電取説を漫画にするとかですね、何回かそういう企画をコミチさんでやっていって、人の漫画を読むっていうことが増えたという感じですね。

─シャープさん、漫画とがっつり接点があるじゃないですか。
SHARP
シャープさん
ありますね……。
たられば
たらればさん
でも(Twitterを遡りながら)三年半くらいですから、案外最近ですね。なんだか、もっと前だったような気がしていました。
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#5 漫画読みとしてのふたり
—お仕事を抜きにして、私生活におけるお二人と漫画の距離感……というとちょっと妙かもしれませんが、どういう作品をお読みになっているんでしょう? 結構たくさん読まれるんでしょうか?
SHARP
シャープさん
人並みくらいの量だとは思うんですけど、私はどちらかというと企業の広告がなかなか読んでもらえないとか、届かないという厳しい状況のなかで、「おっ、漫画という表現形態だけはなかなか読まれるぞ!」っていうところから読むようになったんですよ。たとえば、Twitterでバズるものって多くは漫画ですよね。ですから、人に届くとか人に読まれるって形として漫画っていうのがものすごく今は有効だなと思っているというのが、そもそもの問題意識ですね。それで意識して読むように……。

—なんかちょっとはぐらかされてる気がするんですけど(笑)、好きな漫画は何ですか?
SHARP
シャープさん
好きな漫画? 好きな漫画……僕は……なんのユニークさもないですけど、『ブラックジャック』とかは幼いころから読んでいて、自分の死生観に影響を与えたりしていると思います。水木しげるでも『ゲゲゲの鬼太郎』じゃないやつとか。

—『鬼太郎』じゃないっていうと……?
SHARP
シャープさん
『ラバウル戦記』とか。そういうのはずっと読んできてて。

—『総員突撃せよ!』とか、従軍経験に基づいた作品ですね。
SHARP
シャープさん
それは好き。「好き」っていうと変ですけど、とても影響は受けています。

—水木しげるからガロ系とかにはいかなかったんですか?
SHARP
シャープさん
いや、一通り家にはありますよ。一時そういうのをよく読んでいたっていうのはあります。ただ、多くの人が情熱的に語るほどまで、僕はハマれたわけではない……という風に今は思います。

—たらればさんはいかがですか。
たられば
たらればさん
あんまりいい漫画読みではない、と自分では思っています。『ジャンプ』『マガジン』『サンデー』は読んできましたけれど、どちらかというと活字を読むほうが好きなので、それほどでもないというのが自己分析というか……。なので、好きな作品は何かって聞かれると、すごく王道の『ワンピース』だとか、『ジョジョの奇妙な冒険』だとか、そういう王道のものが中心ですね。『機動警察パトレイバー』だとか。

—なるほど、『ジョジョ』では何部がお好きですか?
たられば
たらればさん
空条承太郎が好きですね。あれは……第三部かな。
SHARP
シャープさん
そうですね。

—たしかに第三部は王道ですね。少年漫画らしいというか。
たられば
たらればさん
でも、SNSで紹介するようになってから、漫画の読み方が変わったなぁと思っていて、たとえばそれこそ、第三部はすごく物語の重要な要素としてタロットカードが組み込まれているじゃないですか。そういった、漫画とは別のラインがあって、それが漫画のなかでクロスしているような作品が好きです。だから『あさきゆめみし』も好きだし、『ちはやふる』も好きだし……。

—そのあたりのラインナップはすごく納得ですね。
SHARP
シャープさん
古典の話をよくされてますもんね。
たられば
たらればさん
ありがとうございます。

—ちなみにおふたりは、今現在だとだいたい月にどのくらい漫画を読まれてますか?
SHARP
シャープさん
買う量っていうことですか?

—「こういう雑誌を買っている」とか、「通勤時間に電子書籍で読んでいる」とか、「これだけは追っかけてる」とか……。
SHARP
シャープさん
うーん、紙の雑誌は買ってないですね。電子書籍にしろ紙の本にしろ、漫画でも活字でも、読み続けているシリーズものが出たら読むとか……。

—好きな作家の新作を追っている?
SHARP
シャープさん
そうそう、そんな感じです。たらればさんもそうだけど、活字の本と漫画の違いがあんまりない読み方をしているっていうか、週刊連載を追うような読み方はしてないです。だからといって、毎月漫画をまったく買わないってことはない。

—読書という営みの中にこう、漫画もいるという……。
SHARP
シャープさん
そうですね、漫画の前に読書がある。だから取り立てて漫画って言われるとちょっと言葉に詰まるところがあります。
たられば
たらればさん
紙の雑誌で漫画を読まなくなっていたんですけど、久しぶりに読むと新鮮に感じることはあります。判型の大きいもので読むと、威力がやっぱり違いますね。ベテランになればなるほど、見開きの威力をよくわかってらっしゃる使い方をされるので、めくらせる力だとかを計算してるなっていうのは、久しぶりに読むと圧巻ですね。だからこれからもたまには、やっぱり雑誌を買ってかないとなぁ……とは思いながら、とはいえ九割くらいはKindleで読んでいますね。

—お二人に共通するのは、漫画だけが読み物のカテゴリとして独立してあるわけじゃなくて、他の本も含めた「読書」のなかに、漫画も含まれていると。
たられば
たらればさん
結果的にかもしれませんが、そうなっていますね。
SHARP
シャープさん
ええ、僕もそうです。区別する必要性を感じていないのかな。
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#6 漫画の持つ「機能」について

—お話を伺っていると、シャープさんはご自分で漫画制作に関わられていることもあって、かなり客観的というか、分析的に漫画表現を捉えられていますよね。
SHARP
シャープさん
それはまあ、そうなっちゃいました……。

—もう少し突っ込んで言うと、いわゆる世間的に「漫画」と呼ばれてきた商業作品と、広告で作る漫画って、形式は同じですけど、実は全然違うものではないでしょうか?
SHARP
シャープさん
そうですね。漫画というと、大きなストーリーみたいなものを描いて、読者はそれに没入してじっくり味わうものと思いがちですけど、そうじゃない漫画もたくさんありますよね。特にTwitterを見ていると、極端に短い漫画とかエッセイ漫画とか、そういった従来的でない漫画が飛躍的に増えていて、読者がそれに触れる機会も増えていると感じます。

—そういう作品を「こんなのは漫画じゃない」とは、もはや言えないですよね。
SHARP
シャープさん
極端な話、名前はなんでもいいというか(笑) 「絵と文字で伝える」という表現を選択する人がものすごく増えていて、そういう意味での「漫画的な表現」に触れる時間はめちゃくちゃ増えています。
たられば
たらればさん
私もそれは感じますね。やっぱり、伝えやすさですかね。
SHARP
シャープさん
そうですね、おそらく広告の漫画っていうのもそれに近いと思っていて、とにかく伝えたいことを伝えやすくするために絵と文字を使う。しかもコンパクトにまとめることができる……素晴らしい。

—そうすると、シャープさんはプライベートで商業漫画を読むときと、SNSで「漫画的な表現」を見るときは、まったく目線がかわるわけですか?
SHARP
シャープさん
そうですね。SNSでは、その漫画が「どれだけ機能するか」というレベルで見てます。もちろん、そういう表現が好きだというのもありますが……。
たられば
たらればさん
うーん、それはシャープさんの漫画に対する間口が広いんですよ。普通はそんなふうに器用に表現を摂取できないですよ。
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#7 仕事目線で漫画を読む

—ちょうど、「お仕事として漫画を読む」という話になりそうなので、クニエ漫画グランプリについて伺っていこうと思うのですが、全六作品の寸評を六回にわたって書くという、なかなか珍しいタイプのお仕事ですよね?
SHARP
シャープさん
確かに、これまでやったことのないタイプのお仕事でした。

—シャープさんは、改めてどういう読み方をされましたか?
SHARP
シャープさん
シェアされやすいかどうかっていうのは見てますね。バズりそうかどうかっていうといやな言い方かもしれないですけど、「届く」というのが大事なので、SNS上で読まれるかどうかという前提で読んでいます。だから、長すぎないか、毎回オチがあるか……というような要素が、さっき言った「機能」の構成要素になると思っているので、今回はそういう目線で読んでいました。

—やっぱりお仕事柄というか、機能性みたいな言葉が出てくるのが面白いなと……。
SHARP
シャープさん
そうですね、ちょっと嫌な言い方だと思いますけど……。

—いや、やっぱり家電メーカーの方が仰ると説得力があります(笑) 作品を、ひとつの装置みたいな感じにとらえるということですね。
SHARP
シャープさん
そうですね。ただ、「機能」のひとつには、次が読みたくなるかといった要素もあると思います。なんですけど、僕はひとまず連載の一回が、一個のパッケージとして、ツイートされたらと仮定したときに「機能」するかな……みたいなことは意識していましたね。

—それこそ今って、連載中の漫画の1話がふとタイムラインに流れてきたりもするわけで、それが読んでもらえるかどうかっていうのは確かにすごく重要なことになってきていると思います。たらればさんはいかがでしたか?
たられば
たらればさん
すごく特殊な体験で、いい勉強になったなと思います。普段は漫画だけじゃなくて、それこそ美術館に行ったり、本を読んだり、旅行に行って普段よりいいものを食べたり、いい景色を見たり……そうすると「すごいな」と思って心が動いてTwitterで感想を言うことが多いんです。「自分はこれにどう感動したんだろう」っていうのを言語化するわけですね。でも、ざっくり言うと上位2%とか3%とかを言語化するわけじゃないですか。

—なにか言いたいくらい心を動かされたときでないと、わざわざ言語化しない、と。
たられば
たらればさん
そうです。でも、今回は「定期的にこれを読んで感じることを書いてください。どう思いましたか?」って聞かれるわけです。そうすると、自分の心を観察する必要があるんですよ。
SHARP
シャープさん
心を観察……?
たられば
たらればさん
あっ、これも言語化しなきゃ(笑) なんていうんですか、いいものを食べたときや、すごい美術品を見たときって、いろんな言葉がポップアップするんです。それを「ここが紹介するポイントだな」って整理するので、あんまり言語化が難しくない。でも、言葉がポップアップするまでいかなくても、心が動いていないわけではなくって、その微妙な感情をどう言語化すればいいんだろう……という作業が寸評を書くにあたっては必要になったんです。そこが勉強になりました。

—作者のみなさんは、誰かのなかで「ポップアップ」が起きることを目指している、とも言えますよね。
たられば
たらればさん
そうです、読者の心を動かしたいと思って描いている。ただ、読者もいろいろですから、作者の意図したところで心が動かなかったり、意図しなかったところで心がすごく揺さぶられるかもしれない。

—プラズマクラスターのマークとか。

SHARP
シャープさん
動きました(笑)
たられば
たらればさん
そういうこともあるわけです(笑) なので、「この作品を読んで、ここが動きました」ということをしっかり書く、寸評のお仕事のポイントはそこだなと思って書いていました。

—お互いの寸評が並んで載るわけですが、お互いに見ていてどういう感じでしたか?
たられば
たらればさん
僕は「シャープさんうまいな~。うまく褒めるな~」と (笑)
SHARP
シャープさん
いや、そんなことは……。

—相手が何を書くかなみたいな、そういう探り合いとかは……。
SHARP
シャープさん
システム的に、お互いの納品が見えるんですよ(笑) だから、自分が書く前に読めるときもあったんですけど、一応自分が書きあげるまでは読まないようにしてました。
たられば
たらればさん
たぶん、シャープさんのほうが納品が早いことが多かったと思いますよ。私はギリギリだったような気がするなぁ。
SHARP
シャープさん
そうかな。そうかもしれない。
たられば
たらればさん
ちなみに僕はね、「困ったとき」は先に納品されているシャープさんの寸評を読みました。で、「ああ、なるほどここか。じゃあ、重複しちゃうからここは外さないといかんな」とか……。
SHARP
シャープさん
そうそう。やっぱり読んでしまうと何らかの影響を受けるので、僕は書き上がるまで読まなかった。
たられば
たらればさん
「ここしかないでしょ」っていう褒めどころが見つかったときは、もう全然見なくてもいいし、なんなら「かぶってもいいや!」と思うんですけど、苦労して苦労して見つけた末にかぶっていたら辛いなぁと思ったので、そういうときは見ましたね(笑)

—本日は興味深いお話をありがとうございました!
たられば
たらればさん
いや、こちらこそ楽しかったです。
SHARP
シャープさん
自分の考えてることを改めて話してみて、色々と整理できました。ありがとうございました!
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