クニエ漫画グランプリ2021の寸評を担当いただいた、たらればさんとシャープさんのお二人にグランプリ結果発表を記念してインタビューを実施。寸評連載の意外な裏話や、お二人ならではの見どころをお伺いしました。
—「この作品のこのエピソード、第何話がすごく印象に残った」という観点で、お二人の感想はどうでしょう?
—むしろ、全体的な傾向が印象的だった……と。
—サッカー漫画が複数の週刊誌で連載されてる的なことでしょうか?
—シャープさんが一番寸評を書きやすかったのはどの作品でした?
—具体的な作品名が出てないので、具体的な作品名で一つくらい挙げていただけると (笑)
—『田端、明日は売るつもり!』ですね。
—僕は不動産屋さんのお父さんのキャラが結構好きだったんですけど。
—あれは最初からそういうつもりだったんですかね?
—会社がなんだか変なことになりそうです(笑)
—職業作家でも、そのあたりは分かれるといわれますよね。完全にフリー、野放し状態が最高だという作家さんと、縛りがある方が逆算して組み立てられるから楽だっていう作家さんがいるように思います。広告漫画だと、やっぱり後者のタイプの方が向いていると思うのですが、シャープさんの食指は動きましたか?
—このクニエ漫画グランプリは、企業がお金を出して漫画賞を主催するという取り組みです。これは、通常の漫画の新人賞とは違いますよね。「今回賞を取ったら雑誌に掲載されます」とか、「担当編集者がつきます、連載獲得を目指しましょう」とか、そういうものとはちょっと違う。こういう異業種の会社が主催する漫画賞というのは、どういう感じで受け止められました?
—クニエさんにとっては、漫画賞を主催しても具体的にすぐ会社に何らかのメリットがあるわけじゃないですからね。
—「こんな予算、ハンコ押せないよ」って光景が目に浮かびます……。
—では、来年の応募者に向けたメッセージをお願いします!
─すみません、あの、読者の方がわかるように(笑)
夫婦のストーリー漫画で、空気清浄機をプレゼントするシーンがあったんですが、その空気清浄機に、小さくプラズマクラスターのマークが描いてあったんですよ。
それだけで、この空間をちょっとよきものにしようという登場キャラクターたちの意志が感じられて、「プロモーションとしてこれはすばらしいなぁ」と。「これはたぶんSHARPの人もすごい喜ぶだろうな」って思ったら、シャープさんが反応していて。それでコミチさんに「シャープさんに連絡取ったほうがいいですよ」って言ったんです。
─シャープさん、漫画とがっつり接点があるじゃないですか。
—なんかちょっとはぐらかされてる気がするんですけど(笑)、好きな漫画は何ですか?
—『鬼太郎』じゃないっていうと……?
—『総員突撃せよ!』とか、従軍経験に基づいた作品ですね。
—水木しげるからガロ系とかにはいかなかったんですか?
—たらればさんはいかがですか。
—なるほど、『ジョジョ』では何部がお好きですか?
—たしかに第三部は王道ですね。少年漫画らしいというか。
—そのあたりのラインナップはすごく納得ですね。
—ちなみにおふたりは、今現在だとだいたい月にどのくらい漫画を読まれてますか?
—「こういう雑誌を買っている」とか、「通勤時間に電子書籍で読んでいる」とか、「これだけは追っかけてる」とか……。
—好きな作家の新作を追っている?
—読書という営みの中にこう、漫画もいるという……。
—お二人に共通するのは、漫画だけが読み物のカテゴリとして独立してあるわけじゃなくて、他の本も含めた「読書」のなかに、漫画も含まれていると。
—お話を伺っていると、シャープさんはご自分で漫画制作に関わられていることもあって、かなり客観的というか、分析的に漫画表現を捉えられていますよね。
—もう少し突っ込んで言うと、いわゆる世間的に「漫画」と呼ばれてきた商業作品と、広告で作る漫画って、形式は同じですけど、実は全然違うものではないでしょうか?
—そういう作品を「こんなのは漫画じゃない」とは、もはや言えないですよね。
—そうすると、シャープさんはプライベートで商業漫画を読むときと、SNSで「漫画的な表現」を見るときは、まったく目線がかわるわけですか?
—ちょうど、「お仕事として漫画を読む」という話になりそうなので、クニエ漫画グランプリについて伺っていこうと思うのですが、全六作品の寸評を六回にわたって書くという、なかなか珍しいタイプのお仕事ですよね?
—シャープさんは、改めてどういう読み方をされましたか?
—やっぱりお仕事柄というか、機能性みたいな言葉が出てくるのが面白いなと……。
—いや、やっぱり家電メーカーの方が仰ると説得力があります(笑) 作品を、ひとつの装置みたいな感じにとらえるということですね。
—それこそ今って、連載中の漫画の1話がふとタイムラインに流れてきたりもするわけで、それが読んでもらえるかどうかっていうのは確かにすごく重要なことになってきていると思います。たらればさんはいかがでしたか?
—なにか言いたいくらい心を動かされたときでないと、わざわざ言語化しない、と。
—作者のみなさんは、誰かのなかで「ポップアップ」が起きることを目指している、とも言えますよね。
—プラズマクラスターのマークとか。
—お互いの寸評が並んで載るわけですが、お互いに見ていてどういう感じでしたか?
—相手が何を書くかなみたいな、そういう探り合いとかは……。
—本日は興味深いお話をありがとうございました!