2024.02.05
日本版 War for Talent 2.0 新たな局面を迎えた人材獲得競争
【第2回】Z世代にアプローチする採用チャネル活用術
菅野 雄太
連載第1回では求める人材像の定義や要員計画について言及した。実際に新卒採用活動を行うにあたり、求める人材にアプローチして要員計画目標を達成するために、新たな採用チャネルの活用は不可欠だ。
少子化や求職者の海外志向が強まるのに伴い人材の争奪戦が激化している中、企業はこれまでの「受け身の採用」から「攻めの採用」へ転換することが急務である。中でもデジタルネイティブと呼ばれるZ世代にアプローチするには、様々なデジタルチャネルの特徴を生かす必要がある。
そこで第2回目となる今回は次の時代を担う“Z世代”に焦点をあて、ここに効果的にアプローチするためのポイントを、著者自身の経験を交えて紹介する。
1. 多様化する採用チャネルの種類と特徴
採用チャネルは年々多様化している。求める人材に効果的にアプローチするためには、各チャネルの特徴をしっかりと理解した上で、自社の認知度や、採用活動に充てられるリソース、予算からチャネルを選択することが重要だ。
まずは主な採用チャネルとそれらのメリット・デメリットを図1に示す。
図:主な新卒採用チャネルのメリット・デメリット
かつては自社情報を就活サイトに掲載し、合同企業説明会・就活イベント等へ参加することで認知度を高め、母集団形成に繋げることが一般的だった。これらは幅広くマス向けに自社を知ってもらうには有効な手法だが、一方で他社との差別化が難しく、活動の成否が会社の規模・予算によるところが多いため、大手企業にとって有利な傾向があった。
一方で、SNSやダイレクトソーシングといった、採用活動において比較的新しいチャネルでは、限られたリソースや予算でも、運用の工夫次第で求める人材に自社の認知・興味・関心を促すこと可能だ。
2. 採用チャネル活用の動向:Z世代に好まれるアプローチとは?
新卒採用市場にいるZ世代は、一般的に以下のような特徴があると言われている。
- デジタルネイティブ(インターネットやスマートフォン、SNSといったデジタルテクノロジーの存在が当たり前)
- 自分らしさを重視する
- 承認欲求が強い
以降、これらZ世代の特徴を踏まえ、採用チャネルをどのように活用することが効果的であるかを紹介する。
(1)ダイレクトソーシング
ダイレクトソーシングとは、採用候補者のスキルや経験といったプロフィール情報を見て、採用したい人材を直接スカウトする方法だ。就活サイト等の求人媒体に広告を出して応募を待つという従来の方法とは異なり、求める人材にピンポイントで自社の魅力や「なぜあなたのスキルや経験が、自社にマッチすると考えているか」を伝えることで、Z世代が重視する「自分らしさ」や「承認欲求」を満たすことができる。画一的なマス向けメッセージとは異なり、採用候補者ごとにメッセージをカスタマイズすることで、「この企業は自分のことをよく理解してくれている」という印象を与えられる。
運用面においては、採用候補者のプロフィールをよく読んでスカウトメッセージを作成する必要があるため、負荷は高くなる懸念があるが、自社の知名度が低い場合でも、求める人材に興味を持ってもらえる有効なチャネルだ。
(2)SNS
デジタルネイティブであるZ世代にとって身近なツールであるSNSを通して、自社のブランディングや認知度向上を図り、候補者から興味を持ってもらうきっかけを作る。例えば、内定者イベントや新人研修の様子など、候補者にとって就活や入社直後の姿をイメージしやすい投稿は、きっかけ作りとして有効である。拡散力があるため潜在層まで自社認知が広まるメリットはある一方で炎上リスクもあるため、投稿内容に注意を払う必要があり、複数人で確認・管理するなどの運用ルール整備は欠かせない。
SNSで自社に興味を持った候補者がより詳しい情報を得られるよう、自社Webサイトやオウンドメディアへ誘導し、会社の魅力やキャリアパス、先輩社員紹介といったコンテンツを通して、会社や自身がどのように成長できるかイメージを醸成させやすくすることが、意向度を上げるために効果的だ。
(3)リファラル
リファラルとは、社員の知人を候補者として紹介してもらう採用手法である。社員と候補者をつなぐOB・OG訪問と異なる点は、OB・OG訪問は候補者である学生側の希望で実施されることに対し、リファラルは社員から知人へ入社を働き掛けることだ。中途採用で広く知られる手法ではあるものの、新卒採用においても若手社員・内定者(以下、紹介者)から知人を紹介してもらうことが可能だ。自社の魅力を知人に説明する際に、紹介者自身も改めて会社について知ったり考えたりするきっかけとなるため、エンゲージメント向上も期待できる。
新卒採用におけるリファラルの紹介者は、自身が数年前に就職活動を経て自社を選んでいるため、知人へ自社を紹介することの抵抗が少なく、協力を得やすい傾向がある。このため、リファラル採用を成功させる際のハードルとなる「いかに社員に協力してもらうか」をクリアしやすくなる。特定の大学や学部をターゲットにしている場合、その大学・学部出身の紹介者から後輩を紹介してもらうことで、効率的に求める人材へのアプローチが可能だ。
運用上の注意点として、入社が決まった際の紹介者への報酬の検討や、不採用となった際に紹介者と候補者との人間関係が悪化しないよう、不採用理由を丁寧にフィードバックするなどのフォローが必要となる。
おわりに
採用担当者は、自社の戦略や要員計画を達成するために、様々な工夫をしながら採用活動に励まれていると思われる。自社の強みや弱み、置かれている状況に鑑みつつ、最適な採用チャネルを見極めていきたい。
本稿が採用活動におけるチャネル選択や、採用業務改善の一助になれば幸いだ。
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