2020.03.16
物流にロボット・AI導入を検討するその前に
物流倉庫のブラックボックスを解消せよ
ロジスティクス担当
産業界を悩ませる人手不足問題。テクノロジーの進化に伴い、省人化の切り札として注目が集まっているのが、ロボットやAI(人工知能)などの最先端技術だ。物流現場でもこれらの最先端技術への期待が高まっているが、果たして検討のタイミングは今なのか。実際は、ロボット導入を検討する前に取り組むべき課題がある。それは、物流倉庫のブラックボックスの解消である。
※当コンテンツは、雑誌Wedge 2018年4月号掲載のPR記事を再構成したものです。
今、ロボットを導入しても物流現場の課題解消には繋がらない
ロボットやAIを導入すれば、物流現場の人手不足を一気に解消できるのではないか――。そのような期待から、最先端技術の導入に関心を寄せる企業は少なくない。しかし、物流へのロボットやAIの導入は時期尚早である。
物流は、人が介在する部分が多い領域で、例えばピッキングひとつとっても、簡単なように見えて人間にしかできない作業である。誤配送などのミスが許されない物流の世界で省人化に寄与できるロボット技術は現段階では発展途上である。現に大手EC企業などの物流先進企業では、今はまだロボット導入を考える段階になく、マテハンによる省人化を極限まで追求し、人手不足に対応している。
むしろ先進企業の強さの根底には、庫内作業効率の可視性がある。物流の省人化を目指す企業は、ロボット導入よりも、まずはそこから取り組む必要がある。
物流の中で最もブラックボックスになりがちなのが、庫内だ。WMS(庫内管理システム)[1]の活用が、入出庫管理や在庫管理というモノの管理や、ERPと連携させることによるカネの管理に留まっている企業が多く見受けられる。しかしWMSの本来の役割はそれだけではなく、これは実は時代が求める省人化に繋がる作業効率、生産性を知ることのできる経営ツールなのだ。まずはWMSによって見えてくる情報の価値を見直すことが必要である。その真価によりブラックボックスを解消し、物流情報を経営情報に昇華させることで、さまざまな経営課題へのアプローチが可能になる。将来的にロボット導入を検討するうえでも、庫内情報の可視化は大前提になる。
庫内可視化とKPI管理で物流を戦略的に管理する
実は既に多くの企業がWMSを導入しているにもかかわらず、本来の目的に沿った運用がなされていない。
庫内作業情報を可視化し、標準化を図ることで国内のみならずグローバルサプライチェーンの構築も容易になる。KPIもマネジメント階層ごとに設定し、グローバルでKPI管理を標準化していく、さらにS&OP[2]の観点を加え、物流を経営課題の戦略的要素として総合的にマネジメントしていくことが重要なのだ。
物流を経営の力に変えるには、在庫管理や作業プロセスの標準化だけではもはや不十分である。庫内生産性の可視化と戦略的マネジメントに取り組む企業だけが、マーケットをリードする時代である。
- [1] WMS: Warehouse Management System
- [2] S&OP(Sales & Operation Planning)とは、企業において、経営層と生産や販売、在庫などの業務部門が情報を共有、意思決定速度を高めることでサプライチェーン全体を最適化しようという手法
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