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Project

数理最適化手法を用いた輸送計画高度化プロジェクト

課題

  • – 小売業において商品輸送計画のロジックやルールが属人化している
  • – 限られた業務時間・要員で、すべてを考慮した最適な輸送計画を作ることはできない
  • – そのため、トラック積載率を意識した輸送計画を作成できていない

アプローチ

  • – 現行の輸送業務をヒアリングによりモデル化
  • – 作業効率を向上させながら、輸送効率を最大化した計画を作成する数理最適化エンジンを実装

課題

物流の「2024年問題」やドライバー不足などにより、小売業・流通業の輸配送は厳しさを増しており、多くの小売業者は従来の運び方のままでは現在のような商品供給能力を維持できなくなることに懸念を感じている。大手小売業者では、メーカーから購入した商品を、中央DC(デリバリーセンター)に一括で保管し、その後店舗配送を行う地域DCへと輸送を行っていた。この中央DCと地域DC間の輸送に大きな課題感を持っていた。


課題の図

具体的な課題として、商品輸送計画時の輸送計画ロジックやルールが属人化していること、また計画立案時に輸送効率の指標である積載率を十分に意識できていないことが挙げられた。小売業では時間や要員が限られた中で業務を行っており、複数人で締め時間までの短時間で計画を作成しなくてはならず、どうしても完璧な計画を作ることが難しいことも課題とされた。
そこで、トラック積載率の向上だけでなく、業務改善も急務であると判断し、当社とともに積載効率改善に向けた輸送計画高度化の取り組みを開始した。

アプローチと結果

数理最適化エンジンを用いたトラック積載率の改善と業務効率の向上

輸送計画高度化の実証実験を行うため、まず現行の計画業務について担当者にヒアリングを行い、業務整理をしたうえでモデルへと落とし込んだ。現行業務では、各店舗からの受注データを受領後、複数の輸送計画担当者が自身の担当商品に関して翌週分の輸送数量計画をExcelで作成、それをもとに別の担当者が庸車計画をExcelで作成、庸車するという流れで行っていた。

輸送計画担当者は、数多くの品目について締め時間までの数時間以内に物量を決定する必要があり、時間との勝負となっていた。計画を終えた後に庸車計画を作成するが、商品ごとの担当者が作成したそれぞれの計画を集計するため、どうしても日々のトラック容積を使いきる計画を作ることはできず、多少の無駄は許容せざるを得ない状況だった。商品の輸送数量は一定の範囲内で担当者の裁量に任されているため、担当者によっては必要最小限の数量で計画する場合もあれば、反対に余裕を持って多めの数量で計画する場合もあり、属人的な作業を要因とする在庫の偏りが発生していた。
そこで、大量のデータや条件をもとに高度なアルゴリズムにより最適解を算出する数理最適化エンジンの実装を行った。これを用いて数週先の需要予測まで取り込み、数日先に必要になるものを前倒して積載することでトラックが満載になるような計画を作成することとした。


数理最適化エンジンを用いたトラック積載率の改善と業務効率の向上の図

まず、今まで担当者ごとで作成していたために調整が難しかった商品別の計画を、行先別に一括で行う形にした(一次計画)。一次計画として作成した物量とトラック容積を比較し、容積に隙間がある場合には、翌日以降に必要となる計画数量から隙間を埋めるための追加(二次計画)を決定し、常にトラック容積を使いきれるようにした。二次計画として追加する商品は、先々の需要予測から優先度を決めることで輸送先が在庫過多にならないよう配慮をしている。
このモデルにおいては、日々のトラック積載率が向上し、後日分の輸送を前倒しするため、数日後のトラック台数を週あたり1~2台削減することが可能となり、結果として年間で1ルートあたり50~100台削減できる見通しとなる。
積載率をさらに向上させる施策として、パレット1枚あたりの積載効率を上げる取り組みもあわせて行った。本来であれば、商品の数量を計画する段階で1パレットあたりの積み付け数を最大化できるよう検討する必要がある。しかし、商品数・種類が膨大であり、商品を組み合わせてパレット容量の限界まで積むための計算は非常に複雑であるため、担当者の経験をもとに余裕を持たせつつパレット内に確実に収まる計画を立てていた。
そこで、各商品の幅・奥行・高さなどのデータをもとに数理最適化エンジンを用いてパレット上の積み付け量の最大化を行った。商品サイズに合わせた組み合わせを作ることで、人力では計画できなかった最大量まで積み付けることが可能になる。パレット枚数を圧縮することで、減らせたパレットの分、より多くの商品を積載できるようになり、更なる積載率の向上も見込める。


数理最適化エンジンを用いたトラック積載率の改善と業務効率の向上の図2

これまで担当者の経験に頼り、数時間かかっていた業務が数理最適化エンジンを用いることによって数分で完了し、属人化した業務の標準化・効率化に大きく寄与する結果となった。また人力では不可能だった精緻な計算をもとにした計画ができるようになったことは、積載率を向上させるだけでなく、抜本的な業務改善への足掛かりとなった。

成功のポイント

小売・流通業の物流課題に対する豊富な知識・経験を有するコンサルタントがリード。複雑な業務を理解するため、業務ヒアリングに最も多くの時間を費やした。担当者自身が言語化できない業務についても時間をかけてヒアリングし、複数回にわたって整理・確認・修正を繰り返した。属人化した業務を単純に置き換えるのではなく、属人化した理由や背景を理解し、本質的な課題を見つけたうえで誰もが実行可能な標準化された業務に設計しなおすことが最も重要なポイントとなった。

プロジェクトサマリ

  • ▪ 支援内容

    • – AIを活用した予測モデル策定とモデルの高度化
  • ▪ フェーズ

    • – 業務整理・実証実験フェーズ:約2か月(3名)

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