未来の利益と原材料在庫推移をシミュレーションすることで限られた供給リソースで利益を最大化する為のS&OP改革を後押し
最大手も課題解決を模索中? 日本の菓子メーカーの現状とは
スーパーマーケットやコンビニエンスストアには、菓子や食品の定番商品や限定商品が所狭しと並べられています。私たち一般消費者にとってはありふれた光景ですが、日本の食品・消費財メーカーは岐路に立たされています。食品・消費財は一般的に付加価値の訴求がしづらく、値上げ時のハードルが高いと言われています。コスト構造の改善も長年のテーマでした。要因は多岐にわたりますが、小売量販店とビジネス関係において、様々な課題が有ったのも事実です。
例えば、小売量販店が独自に掲げているブランド、いわゆる「プライベートブランド(PB)商品」の増加があります。メーカーは、プライベートブランド商品の製造を担っていますが、メーカーは自社ブランド品と並行してこれを製造するため、管理しないといけない商品数と資材が増え、連続生産も困難になる為に生産効率は下がる傾向にあります。
さらに業界慣習として、販売奨励金や各種リベートもあります。こうした販管費が利益を大きく圧迫しているのが実情です。
「供給コストの最適化とじゃがいもの在庫量」を把握することからスタート
日本を代表する菓子メーカーであるカルビー株式会社。主力商品はポテトチップスで、同社のじゃがいも買い付け量は日本の年間生産量の2割近くにのぼります。ポテトチップスの原料となるじゃがいもは産地である北海道からの長距離輸送が必要となるため、売上物流費が大きく、販売SKU数の増加にともない、各種効率と営業利益率が低下傾向にあります。原料であるじゃがいもや工場の製造ラインなど限られた供給リソースをつかって、“誰に、何を、どう売れば”利益が最大化するのか判断がつきにくいという課題を抱えており、クニエが相談をうけることになりました。
クニエのコンサルタントがカルビーとともに真っ先に手掛けたのは“供給最適化とじゃがいも在庫推移のシミュレーションと可視化”でした。当時、カルビーは、全国に多くの工場を持ち、”どこで製造し、どう運び、誰に販売したら、供給コストが最小化するのか”の計画立案に時間がかかっていました。また、じゃがいもを共通の原料とする商品がとても多く、販促キャンペーンも多岐にわたるため、将来のじゃがいもの在庫量の正確な把握が大きな経営課題でした。
供給最適化とは、各工場や物流センター供給能力や制約、輸送手段やルートなどをデータモデリングし、クラウド上で供給最適化シミュレーションを実行することです。これによりマーケティング・営業部門がつくった販売計画をもとに生産・物流・調達コストを最小化し、将来のじゃがいも在庫の推移を計画できるようになりました。
将来の利益を全社最適視点で計画するS&OP改革に乗り出したカルビー
現在カルビーでは、各地域の営業現場の判断で販売先の要求に応じて商品を企画・販売してきた従来のやり方を改め、本社のマーケティング部門主導で、原材料の収穫・在庫状況や需要予測、ブランド戦略などに基づいて全社的な販売戦略を策定し、それに沿って商品を販売するビジネスモデルへの転換を図っています。そのためには、マーケティング部門を中心として未来の売上と利益を計画し、各種営業施策のアクセル/ブレーキを意思決定していくS&OPプロセスを構築する必要がありました。クニエではこの取り組みを支援するため、業務プロセス改革や、組織改革から人事評価制度の設計、更にはシステム導入に至るまで様々な側面で一貫したコンサルティングサービスを提供しています。
さらに、データを活用し最適な販売・物流戦略を策定するためのソリューション開発も進めています。同様の仕組みを多くの食品・消費財メーカーに提供することで業界が直面する課題解決に貢献し、ひいては社会全体の発展に大きく貢献できると考えています。